業務改善の日々 5話:業務のワークフローのシステム化

序章

今回から一歩進んで業務改善をやっていきます。

今まで、書類の整理、重複業務の廃止、データの一元管理などで業務改善を行ってきました。
これらは、根本的にはムダな業務を廃止することにより、業務改善することができました。

不要な業務の廃止は効果が出やすい方法ですので取り組みやすいです。
しかし、廃止できる業務がなくなると、行き詰まります。

次のステップとしては、廃止できない業務を効率的に行うための改善となります。

https://dai-memo.com/310/

今回からは、システムを使って業務の改善をしていきます。

ワークフローのシステム化のメリット

システム化の改善には2つのキーワードがあります。

  • ペーパーレス化
  • 業務進捗の見える化

ペーパーレス化

ペーパーレス化は、ただ紙がなくなるだけではありません。

紙での手続きをシステムで完結するようにすることで、手続きを行ったデータは全てシステムのデータベースに残ります。

システムで処理した業務の内容を確認するのも、システム上で検索して素早く見つけ出すことができます。
また、データベースに蓄積されたデータを分析することで、さらに色々な改善を行うことも可能です。

業務進捗の見える化

また、業務の進捗がシステム上で見えるようになるのも大きなメリットです。
複数人の承認が必要な業務を紙で行う場合は、紙を回覧することになりますが、誰が紙を持っているか分からないため、自分の手を離れた後は業務の進捗が分からなくなります。
しかし、システムならば誰で業務が止まっているかが一目で分かるようになります。急ぎの業務のフォローするときに書類が誰で止まっているかを確認する手間も無くなります。
案件が増えてくると、処理待ちの書類が増えてきて、必要な書類を探すのに時間がかかるようになります。これが、システム化することでシステム上で検索すると簡単に見つけることができるようになります。

システムの必要性

私の所属している職場では、毎日多くのの申請書を作成したり提出されたりします。

主な申請書

  • 再審処理申請書(製品が規格から外れたという報告の書類)
  • 工程変更申請書(製造工程を変更するための書類)
  • 初回品管理申請書(初めて製造する製品の管理項目を指示する書類)

メーカーで品質管理するために必須の申請書です。
(この他にもたくさんの申請書がありますが)

これらの申請書は、権限のある人がレビューし承認することで案件がクローズしていきます。

しかし、膨大な量となるため紙でこのような申請書のレビュー・承認をしていると次のような問題点があります。

  • 申請書が机に山積みにされ、必要な申請書を探すのに時間がかかる。
    (特にレビューに時間がかかる案件)
  • 申請書が誰の承認待ちで止まっているか分からなくなる。
  • 申請書が提出されるたびに、台帳に申請書の番号を入力する手間がかかる。(こちらは、一部の申請書はMicrosoft ACCESSを活用することで対策しました。)

これらの問題を解決するためには前話でもお話したようにワークフローのシステム化が有効です。

自分ではシステム化すると業務が大幅に改善させることが理解できても、会社では費用対効果があることを、上司に理解してもう必要があります。

上司が業務改善の効果をすぐにイメージできる人なら、話は進めやすいですが、イメージができない人だと話を進めることができません。

言い方が悪いですが、優秀な担当の上司が無能だとここはめちゃくちゃ苦労します。

幸いなことに、現在の上司はある程度理解ある人だったので、それなりにスムーズに話を進めることができました。

まずは工程変更申請書のシステム化を進めることとしました。

この申請書をターゲットにしたのは3つの理由からです。

  • 申請書の数が多い
  • 承認者の数が多い
  • 案件の完了までに時間がかかる

申請書の数が多ければ、単純に効果が大きくなり多くの工数削減が見込めます。

承認者の数が多く、申請書のステータスの管理が困難になっている状況がありました。
承認者が2,3人くらいなら、承認の進捗状況を1人づつ確認することもできますが、工程変更の場合は10人以上の承認が必要になることもあります。誰で業務が止まっているかを確認するだけでも非常に大きな工数が必要となります。
また、紙だと基本的には1人づつ回覧することになり時間が回覧に時間がかかっていました。システム化すれば、同時進行でレビュー・承認も進めることもでき、承認時間の短縮も見込めます。

また、完了するまでに時間がかかる案件も多くあります。日々の業務にその案件が埋もれ、案件自体が忘れ去られてしまうことがあります。ある日突然、案件が完了していないために問題が発生し炎上します。
システムで管理することで、案件がシステム上で表示されるため、案件を忘れたり埋もれたりすることがあります。

これらの問題を解決するために、工程変更のワークフローシステムの具体的な仕様を考え、そのシステムを導入するために必要な費用を見積もることになりました。

システムの見積

工程変更システム導入の費用対効果

システム化により、業務を改善するためには費用対効果を検討する必要があります。
改善するのに必要なコストよりも効果が少なければ、改善のための投資はむしろ無駄になってしまいます。

そのために
「システム導入後のコスト削減効果の見積もり」
「システム導入時の費用の見積もり」

システム導入後のコスト削減効果の見積もりは、1年間に発行される工程変更の件数と、1件の処理の削減時間と時間あたりの人件費をかけて算出します。それに加えて、年間の書類を探す時間の削減時間を見積もる感じでした。

システム導入時の費用の見積もりは、システムの仕様を作ってシステム会社に見積もりしました。

工程変更システムの仕様書の作成

工程変更システムの仕様書を作るのは、次の2ステップが必要となります。

  1. 工程変更業務の内容の理解
  2. システムの仕様書への落し込み

システム化する時の失敗は、これのどちらかもしくは両方が欠けていると起きると実感しました。

幸いなことに、私は工程変更業務は社内で1番というくらい理解してましたし、システム化には趣味でプログラムの勉強をしたこともあり大きな問題は生じませんでした。

さっそく、現状の工程変更の業務を整理し、システムで運用する際の細かい仕様を検討しました。

  • システムへの入力項目
  • 承認フロー(順序や場合分け)
  • ユーザーインターフェイス
  • 登録された情報の検索/出力
  • 外部システムとの連携
  • ユーザー管理

主にこの当たりを作り込みました。

他にも、社内のシステムの管理者の方と話をして、セキュリティやサーバー環境なども仕様として盛り込みました。

工程変更システムの見積り

作成した仕様の内容を上司に説明し承認を得てから、システム会社3社に相見積もりを行います。

この中で、2社はフルスクラッチでのシステム構築の提案、1社はパッケージソフトの導入を提案してきました。

フルスクラッチとは?
既存のものを一切流用せずにまったく新規に開発すること。もとは模型の分野で使われていた和製英語で、ITの分野では既存のコードを一切使わずにゼロからソフトウェアを開発することを指す。

https://e-words.jp/

フルスクラッチは細かい部分まで、要望通りのシステムが構築できるというメリットがありますが、デメリットも多くあります。

  • 開発に時間がかかる
  • 導入コストが高くなる
  • 導入後の仕様変更に時間とコストがかかる

一方、パッケージソフトはソフトで出来る範囲の仕様でのシステム構築しかできませんが、メリットも多くあります。

  • システム構築は自分が頑張れば短く出来る
  • 導入コストを低価格に抑えることが出来る
  • 導入後のコストは基本はライセンス料のみで低価格
  • 仕様変更は自分ですぐにできる

パッケージソフトは、自分でやる作業は増えますがコスト面とメンテナンス面で大きなメリットがありました。

導入コストも抑えれることもあり、ワークフローのパッケージソフトを導入することになりました。

次話ではパッケージソフトの導入の話になります。

ワークフローソフトの導入

ワークフローソフトの体験会

導入する予定のワークフローのパッケージソフトを実際に触って見るために、無料で開催されてる体験会に参加してきました。

体験会では、簡単なワークフローの作成と作成したワークフローの操作のデモを行ってきました。

ワークフローの構築のユーザーインターフェイスも分かりやすく、ほぼノーコードで構築ができることが確認できました。

構築したワークフローでの承認も体験しました。
承認待ちの案件は一覧で見ることもできますし、回覧中、回覧完了に関わらずシステム内に登録された文章は検索で簡単に見つけることも出来るようになっていました。

システムの構築と承認者の操作の利便性のどちらも問題ないと感じたので、導入することで社内で最終調整をすることになります。

ワークフローソフトの導入

このワークフローソフトの設定/操作はWebブラウザーで出来ます。
形態としてはクラウド版とオンプレミス版※の2つがありました。

オンプレミスとは?
サーバーやソフトウェアなどの情報システムを、使用者が管理している施設の構内に機器を設置して運用することをいう。

ユーザー数が少なくて小規模ならば、クラウド版が良さそうですが、私が働いている会社は、会社の規模が大きいことと既存のデータベースとの連携をしたかったという2つの理由でオンプレミス版を導入することになりました。

パッケージソフトの導入はサーバーの管理をしている部門にお願いしました。

販売元のシステム会社に私が働いている会社のサーバーにソフトをインストールしてもらいます。

インストールおよび設定が無事完了しました。

Webブラウザーで指定のURLに接続すると、ワークフローソフトのログイン画面に接続することが出来ました。

ユーザーIDとパスワードを入力することで、操作画面にログインすることができました。

ワークフローソフトの使用方法のセミナーの開催

このワークフローのソフトは、自社でデータの入力画面や承認フローを作成する必要があります。

細かい設定ができる反面、設定項目が多く全てを説明書を読みながら行うのは大変でしたので、基本的な使い方を教えてもらえる導入セミナーを開催してもらいました。

セミナーの内容は主に下記の2つでした。

  • ワークフローの承認者の基本操作
  • ワークフローの構築の基本操作(入力フォームと承認フローの設定)

このセミナーで基本的な使い方は理解できたので、実際に業務で使うワークフローの構築に取り掛かりました。

次話ではパッケージソフトを使ってワークフローを構築する話になります。

システムの構築

実際に業務で使うワークフローを構築します。

組織とユーザー登録

前話でワークフローソフトをインストールしました。

次は、このシステムを使う会社の組織とユーザーを登録することになります。

まずは、このシステムを利用する会社の組織(部門)を登録します。

その後、このシステムを利用するユーザーを登録します。

最後に利用するユーザーがどこの部門に所属しているかの設定をします。

これでシステム上で、誰がどこの部門に所属しているかを分かるようになりました。

これでワークフローを構築する前の準備が整いました。

実際にワークフローを作ってみる

ワークフローシステムは大きく分けて次の2つの要素から出来ています。

  1. 入力フォーム
  2. 承認フロー

入力フォームは、紙の申請書に記載する項目を設定します。

承認フローは、申請した内容を承認する順に設定していきます。

まずは、不適合処置のワークフローを作ってみました。

最初はパッケージソフトの使い方の理解も浅いので、分からないところは説明書を読んだり、システムの開発元にやり方を聞いたりして苦労しながらシステムを構築していきました。

今の業務をシステム化しようとすると、やり方が曖昧なところやルールが運用と合っていないところなどが出てきました。

ワークフローを作りながら、曖昧なところを明確にしたり、現在の運用と不一致なルールは見直しをしていきました。

システム化は、業務内容自体の見直しをする良いタイミングだと感じました。

システムの運用

システムの利用者への説明

不適合品の処置のワークフローが完成したので、システムを利用する関係者に、紙での運用からシステムでの運用に変更するという内容の説明会を開催しました。

どこにでも、現状からの変化することに対して抵抗を示す人はいます。慣れない作業に対して、今までより手間がかかると思う人も多くいました。

「今までと比べて手間が増えることがないこと」
「進捗が見える化できることのメリット」
「登録されたデータ分析により業務改善ができること」

などを丁寧に説明しました。
ほとんどの方は理解を示してくれました。

本運用前にシステムを使ってみたいという要望があったため、まずはテスト運用をすることにしました。

テスト運用

本運用前に1週間程度、利用者に操作に慣れてもらうためにテスト運用をしました。

テスト運用では、仮想の不適合に対する報告をしてもらい、内容をレビューし承認などしてもらいました。

システムを使用してもらうと、説明会で話した内容を実感してもらえました。

途中でいくつか質問よ要望がありましたので、対応しました。

テスト運用で作成したデータを消去し、運用を開始します。

運用開始

長い道のりでしたが、いよいよ不適合処置のワークフローシステムの運用開始です。

テスト運用で操作をしてもらいましたが、実際に運用を開始すると当初は想定できていなかった事象が発生します。
想定外の事象に対しては、都度システム側の仕様を変更することで対応するしました。

素早く仕様変更できたのは、ワークフローシステム化をパッケージソフトを導入し自分で行ったためです。
パッケージソフトでは設定できる項目に制約はありますが、低価格で素早く仕様変更ができるのが最大のメリットだと感じました。

不適合処理のワークフローシステムが軌道に乗って、皆が導入したソフトの使用に慣れてきたので、「変更管理」や「初回品管理」などのワークフローも作成し運用しました。

紙で行っていた業務の多くをシステム化することで、進捗の見える化やデータベース化を実現することができました。
業務が途中で滞ることなく、スムーズになりました。

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